自分の見ている世界は客観的に見ている世界でしょうか。他の人と同じものが見えていることから客観的なものだと今まで感じてきたかもしれません。しかし、他の生物たちは全然違う世界をみているかもしれない、さらには、人同士でも異なる世界を見ているかもしれないのです。
生物ごとの環世界
生物は色々な感覚を使って世界を捉えています。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、などですね。生物によっては磁気などの感覚を持ち合わせています。その中で一番わかりやすい視覚について考えてみましょう。
生物というのはみな自分に必要な情報を取捨選択しています。犬だったら、ドッグフードを食べ物だと認識し、座布団を寝る場所だと認識し、ボールをおもちゃだと認識し、椅子や机や壁はただの障害物だと認識します。つまり、自分に必要なことだけを区別し、椅子と机を区別することはありません。このように自分の主観的世界、本の中では「環世界」と呼ばれるもの、を展開しているわけです。
人によっても異なる環世界
この環世界は自分と他の人でも異なります。
普段田舎に住んでいて山に慣れている人と、普段都会に住んでいて山には滅多に行かない人がいるとします。この2人が一緒に山に行ったとき、見えている世界が全然違うことは想像つくでしょう。都会に住んでいる人は、木を木と認識し、草を草と認識し、生き物を生き物と認識します。それに対して、田舎に住んでいる人は、木を実のなる木かどうかで区別をし、草を毒があるかで区別をし、生き物を人に危害を加えるかどうかで区別をする、というようなことをしています。
このように、人間という同じ生物同士でも異なる環世界を有しているのです。
まとめ
以上は、この本の全体のテーマである「環世界」について、私なりに例を挙げて解説したものです。
「環世界」という言葉が、実際にどういう意味合いを持ち、様々な生物でどのように異なるか、というのは本を読んで確認してみてください。他の生物の環世界の不思議な性質を見ることができます。また、生物によって環世界が違う様子を実験によって示しているのを見ることもできます。
原著は1933年に書かれた、いわゆる科学の古典と呼べるものですが、今まで考えたこともなかったような新たな見識を得られるものとなっています。図も多く使われていて読みやすい本となっています。
この「生物から見た世界」をぜひ手に取ってみてください!