統計や数字というのは色々な場面で使われています。「日本人の平均年収は〇〇円だ」「93%の人がダイエット効果を実感!」「この薬は30万人の病気を治した」などという具合です。これらの文言はそのまま信じても良いものなのでしょうか。統計結果という科学的なものだからといって鵜呑みにすると痛い目に遭うかもしれません。
どんな本なのか
この本は出版されたのが50年以上前なのですが、未だに売れ続けているベストセラーの本です。私が買ったものがちょうど第100版でした。
趣旨としては、統計や数字を使って人に勘違いさせる方法を知ることにより、自分自身が騙されないように対策しよう、というものです。この世には様々な数字が飛び交っています。それらの数字が信頼に足るものなのか、また信頼できないのであればどのような情報が加われば信頼できるものに変わるのか、というのを学ぶことができます。
統計、というと難しいイメージがあるかもしれませんが、数式は全くと言っていいほど出てきません。そのため、統計を学んでいないどころか数学も苦手という人も含め、誰にでも理解のできるような文章になっています。もちろん、本格的な統計に興味がある場合にはこちらの記事もご覧ください。
統計検定2級は基本的な統計を扱えるかどうかを問うものとなっています。様々な分野で統計が重要となっているなかで、統計を使えるようになるための勉強材料としては最適なレベルになっていると思います。統計の勉強を始めたい人はここか …
数字の力
数字を見せられると人は信頼をおきやすくなり、さらには行動させられやすくなります。先ほども例に出した「93%の人がダイエット効果を実感!」というような広告があるとします。これを「ほとんどの人がダイエット効果を実感!」と置き換えても意味の上ではあまり違いがありません。しかし、93%という具体的な数字を出された方が広告の宣伝効果は高くなると思いませんか?
このように、数字には強い力があります。この力は使い方によっては多くの人を動かすことのできるものです。その数字の効果を知り、数字の表すところをきちんと理解する術を持っていないと、数字に騙されることになってしまうのです。
平均年収の不思議
平均年収という言葉があります。平均というのは厳密には算術平均という、人の年収を足し合わせてそれを人数で割ったもの、を使う場合が多いです。
この平均というのは非常に厄介なものです。「うちの会社の平均年収は約700万円です!非常に稼げる会社です。ぜひうちで働きませんか?」という広告があったとします。全部で100人ほどの規模の会社らしいです。さて、あなたはこの会社に入ろうと思いますか?(700万円はまあまあ良い年収という前提で考えてください)
もちろん、全員が大体同じくらいの年収で、みんなが700万円近辺に分布しており、それなりの給料がもらえるという場合もあります。しかしながら、平社員90人の給料は400万円、9人の取締役が2000万円、社長が1憶5000万円、という非常に偏った給料分配だったとしても平均年収は約700万円になります。広告はウソをついていませんが、これではあまりにも不公平な感じがしますよね。
グラフの視覚効果
下のグラフはある中学生の成績推移を表しています。4月に塾に入ったことで、5教科500点満点での点数が1年間でどのように伸びていったのかを表しています。
これを見ると「塾での学習効果は高そうだ!」と感じます。どんどん点数が伸びていっているのですから。このグラフを見た他の親御さんも塾に行かせたくなりそうですね。
ですが、これは実態をどの程度性格に表しているのでしょうか。本当に塾に入れさせたことは正解だったのでしょうか。
次にこちらのグラフを見てみましょう。同じように成績推移を表したグラフです。
あまり伸びているようには見えない気がします。若干グラフは右肩上がりですが、それほど頑張って勉強しなかった子なのでしょうか。
それは違うのです。2つのグラフは全く同じデータについて表したものなのですが、グラフの作り方が違うのです。1つ目のグラフはその中学生の成績の最低点と最高点の間でグラフの縦軸を作っているのに対し、2つ目のグラフはテストの最低点と最高点の間でグラフの縦軸を作っています。同じデータなのにここまで印象が変わるのですね。
まとめ
この本では、上にあるような統計や数字のトリックが他にもたくさん出てきます。また、それらにどう対処するべきかについても書かれています。騙されないための知識をしっかり溜めて良い人生を送るのに非常に役立つとともに、純粋にトリックに驚き楽しむこともできる面白い本となっています。
この「統計でウソをつく法」をぜひ手に取ってみてください!