医学教育

みなさんも風邪をひいたり、予防接種を受けに行ったり、お医者さんと関わることはちょいちょいあると思います。重い病気をして入院する場合だって人によってはあるはずです。そんな時に命を預けるお医者さん、彼らはどんな風に勉強してきて人の命を預かっているのでしょうか。その教育現場について現役医学部生が語っていきたいと思います。



総合的な学力をつける~教養課程~

どの大学でも入学して最初は教養課程で学ぶことになります。ここでは、数学、理科、英語、などの高校の勉強の延長から、プログラミングや第二外国語などの大学特有の授業を受けることになります。期間は半年から1年半と、大学によってバラバラです。

この教養課程で学ぶことが医学の勉強の基礎になるので、結構重要です。大学レベルの理科の知識がある程度ないと体内の現象を把握するのが難しかったり、英語をきちんと扱えないと論文を読んだり研究発表などができなかったりするので、ここの勉強で遅れると後々大変になってきます。ただ、選択科目によって自分の好きなことを学べる期間でもあるので、私は楽しかった覚えがあります。他の学部の人と関わることのできる機会でもあります。

もちろん医学のことについて先に学び始めることもできる場合が多く、他の学部の人も学べるように医学の広い知識についての選択科目も開かれています。ここで医学の概要を掴んでおくと、本格的な医学勉強が始まった時に楽だったり、医学勉強のモチベーションがあがったりするかもしれません。

体の仕組みを学ぶ~基礎医学~

教養課程が終わると基礎医学を学び始めます。基礎医学とは、体内の現象やそれに関わる仕組みなどの部分を学ぶことを指します。具体的には、生化学、組織学、解剖学、免疫学、微生物学、薬理学、病理学、生理学など、があります。体の機能のことをきちんと学んでから、具体的な病気の話に入っていくわけですね。大体1年から1年半ほどで学び終えます。

この中で特殊だと思われるのが解剖学です。その名の通り解剖を行っていくもので、亡くなった方に献体をしてもらって、それを解剖していきます。解剖しながら実際の臓器や神経、筋肉、などを見ていき、それらの構造を頭に入れていきます。「そんなのできない~」と他の学部の人は言うことが多いのですが、なんかやってみるとそこまでハードルの高いものではなく、徐々に作業感が出てくるものですね。慣れというのは少し怖いものだと感じます。

ツライ科目としては解剖学と生理学が挙げられると思います。というのも、この2科目は体全部のことについて色々と覚えていく必要があるからです。解剖学は、筋肉の位置や神経の通り方、臓器の位置や形、などについて膨大な量の情報を頭に叩き込むうえ、英語でも覚えさせられます。生理学は、その臓器たちが実際にどう働いているのかというのを学ぶ学問で、機能面を重視して考えます。機能にも色々あり、互いにどのように関わりあっているのかというのを覚えていくのが非常に大変となっています。

基礎医学では実習を行うことも多いです。その科目に関わる実験を行って、レポートを書くというものになります。例えば、生化学だったら酵素反応や遺伝子といった化学的なことについての実験を行っていきます。座学は大変だけどこちらは楽しい、という人もいれば、レポート書くのが大変でイヤだ、という人もいて、意見が分かれるところですね。

実際に病気について学ぶ~臨床医学~

いよいよ治療に関わる勉強に入っていきます。いわゆる内科、外科、眼科、耳鼻科、などの各診療科のことについて学ぶのがここです。あらゆる診療科の知識についてここで学んでいきます。このときに基礎医学の知識がちゃんと身についていないとかなり大変になってくるはずです。期間としては1年から1年半ほどです。

ひたすらに知識を叩き込んでいき、試験を受けて単位を取る、というのを繰り返していきます。もちろん、メジャーな科やマイナーな科で勉強量とかは変わってくるのですが、基本は同じように勉強していくことになります。

面白い点として、東洋医学も少し学ぶ大学もあるんですよね。基本的に私たちは西洋医学の知識を身につけて、それを医療として患者さんに提供するのですが、東洋医学も少しは学んでおこうということなのでしょう。

重要な総合試験~CBTとOSCE~

ここまでが座学で学ぶ主な内容です。この時点で大体4年生になっている場合が多いです。そして、ここまで学んだところで行われるのがCBTとOSCEという試験です。

CBTというのは、医学の知識に関する試験です。今までの勉強内容がきちんと身についているのかということの総合的な試験となっています。コンピュータで出題され、プール問題からランダムで出題されるようになっています。そのため、隣の人とは全然違う問題を解くことになります。

OSCEというのは、基礎的な診察ができるのかというのを測る試験です。実際に患者役の人を相手にして、診察を行っていきます。CBTとはまた異なる形の知識や能力が問われる試験となっています。

この2つの試験をクリアすることにより、スチューデントドクターという資格を得ることができます。この資格があることが、次の病院実習に進むためへの条件となっています。

実際の現場を見る~病院実習~

晴れてスチューデントドクターとなった学生は病院実習へと進んでいきます。大学には附属病院があるので、そこで実習を行っていきます。その病院にある診療科を1つずつ、それぞれ2週間ほどずつでまわっていきます。実習とは言っても実際の医療行為を行うことはできないので、病院の様子を見学したり、医療行為ではないが患者さんと関わることのできるようなことを行ったりしていきます。

ここでは、臨床医学を座学で学んだあとに、その知識をどのように使って医療現場は動いているのかを見ていきます。また、病院内のカンファレンスとかも見て、どのような仕組みで医療現場が機能しているのかというのも見ることができます。

医師になれるかの境目~医師国家試験~

病院実習が終わるのが大体6年生の前半期で、それ以降は医師国家試験に向けた勉強がメインになってきます。2日間で400問の問題を解いていくという結構ツライ試験になっています。出題範囲としてはもちろん医学全般についてで、病院実習で学ぶような内容についても問われます。特殊なシステムとして禁忌肢というものがあり、3問以上で選んでしまうと他の問題がどんだけあっていても不合格となる選択肢があります。このような選択肢は人の命を脅かすような選択肢なので、絶対に避けなくてはならないという意味で設けられています。

医師国家試験の気になる合格率についてですが、最近は大体90%前後で推移しています。これは全体の合格率なので、新卒の人は95%くらいになっています。1度落ちた人は何回も落ちやすいのですね。普通は単位を取得してCBTも合格しているような人であれば受かる試験となっているようです。

これで晴れて医学部の勉強は終わりです。お医者さんになれます!……と思ったらそんなことはないのですね。6年間では終わらないのが医師養成というものなのです。

医学部卒業後の研修~初期研修と専門医研修~

医学部卒業後には、実際に給料をもらいながらも研修という形で勉強を続けていきます。マッチングという制度によって働く病院を決めて、そこで働いていきます。

まず、初期研修というものを行っていきます。これは法律で義務付けられているもので、医師として働くためには通らざるを得ない道となっています。2年間、色々な診療科で働きながら医療行為をしていき、医師として必要な技能を身につけていきます。ただ、満遍なく色々な診療科を回っていくことから、一つひとつの技能はそれほどきちんと身につくものではないようです。

そこで実際の技能を身につけるために必要なのが専門医研修となっています。実際にどの診療科で働くかを決めて、そこの医局に入って働きながら学んでいきます。3年間同じ診療科にいるため、その診療科として働くための必要な技能が身につくようになっています。



まとめ

ここまで読んでみてどうでしょうか。最短でも11年間勉強や研修をして、やっと医師になっているわけですね。こう考えるとまあまあ信頼しても良さそうですが、まあ多少サボりながらでも医師になれるというのも事実です。こういう知識を身につけたうえできちんと判断していきたいです。