
核内に遺伝情報であるDNAがあることを話しました。では、そこから具体的にどのようにして遺伝子発現が起こっていくのかを話していきます。
遺伝子発現とは
遺伝情報であるDNAは主にタンパク質の情報を運んでいます。このタンパク質の情報のことを遺伝子と呼び、DNAからタンパク質を作り出す流れのことを遺伝子発現と呼ぶわけです。
タンパク質は約22000種類あると言われています。不思議なことにタンパク質を作る情報はDNAの中でもわずか1%ほどだと考えられており、それ以外の部分が何をしているのかはほとんどわかっていません。残り99%も使われているのであれば、そちらも遺伝子発現と呼ぶでしょう。
今回はタンパク質の発現について、タンパク質が実際に使われるまでの流れを説明していきたいと思います。
転写
まず、行われるのが転写という作業です。
DNAはATGCという4文字の塩基配列からなる情報を持っています。この情報のうち、タンパク質を作る情報をRNAに移してあげるのが転写という作業になります。
DNAは常に核内にいるので、RNAに情報を移して、そのRNAが核から出ていき、タンパク質合成につながるというわけです。
実際にDNAからRNAに情報を移すのはRNAポリメラーゼIIという物質です。この物質がDNA上を伝っていき、情報をRNAとして書き出します。RNAではTという文字がUという文字に変わるのは気をつけておきましょう。
スプライシング
作られたRNAを切り貼りして、タンパク質を作れる状態にする作業をスプライシングと呼びます。
DNA上のタンパク質情報を持つ部分からRNAを合成したはずですが、1つのタンパク質を作る情報というのは実は飛び飛びになって存在します。その飛び飛びになって存在するいくつかの情報をくっつけて初めてタンパク質を作ることができるのです。
転写では、DNA上に飛び飛びに存在するタンパク質情報を、情報でない部分と一緒にすべてRNAに移します。そして、そのRNAを切り貼りして、情報でない部分を取り除くのがスプライシングという作業です。
ここでできた、タンパク質を作るのに必要十分な量の情報を持ったRNAをメッセンジャーRNA(mRNA)と呼びます。
翻訳
これまでの過程でできたmRNAをタンパク質にしていくのが翻訳です。
タンパク質というのは20種類のアミノ酸が1列に並んでできています。これをポリペプチドと呼びます。さらに、そこに色々な修飾をしていくことで、タンパク質として機能するようになります。
このmRNAからポリペプチドを作り出すわけです。RNAのAUGCという塩基配列のうち、3文字ごとに1つのアミノ酸を指定します。30文字あったら10個のアミノ酸配列を決められるわけですね。
この翻訳をする場所がリボソームです。リボソームには2つの部位があり、1つの部位ではRNAの塩基配列を読み取り、もう1つの部位ではアミノ酸をつなげていきます。
mRNAに対応する3文字を持ったトランスファーRNA(tRNA)が特定のアミノ酸を持ってきます。そして、tRNAはmRNAにくっつき、そのときにアミノ酸もポリペプチドに結合します。これを繰り返してポリペプチドは伸長していきます。
ここまででタンパク質の原型が出来上がりました。
タンパク質の成熟
こうして合成されたポリペプチドは、色々な作用を受けて成熟していきます。
アミノ酸の紐という状態ではタンパク質も働けません。きちんと折りたたまれて正しい立体構造になる必要があります。これをフォールディングと呼びます。
また、糖などの様々な物質をくっつけられることで働きを得るものもあるので、それらも付加されていきます。これを修飾と呼びます。
こうしてできたタンパク質はそれぞれ必要な場所に運ばれて機能するようになるわけです。
まとめ
タンパク質を作る、というだけでもこれだけのたくさんの過程を踏む必要があるということを覚えておきましょう。
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