忙しい時、誰もが一度は思ったことがあるでしょう。「寝る時間が惜しい!」と。
では、人は何で眠るのか、という疑問を持ったことはないですか?食欲は体を動かすためのエネルギーを摂取するために必要、性欲は子孫を残すために必要、というのは想像がつきます。しかし、睡眠がなんで必要かというのを明確に答えられる人はいないのではないかと思います。体を休めるためなら座ったり横になったりすればいいだけだし、頭を休めるためなら何も考えずにぼーっとしていれば十分なはずです。
この身近な疑問の答えに迫ろうというのがこの本のテーマとなっています。
睡眠の仕組み
最初に、睡眠のおおまかな仕組みについて語られています。
レム睡眠とノンレム睡眠という言葉は聞いたことある人が多いと思います。これらを浅い睡眠と深い睡眠ととらえている人も結構いるはずですが、実はメカニズムが全然違います。
また、睡眠がどのように引き起こされ、どのように覚醒へと戻っていくのかということについても触れられています。睡眠を司る脳の機序をきちんと理解できるようになっています。
睡眠の研究
著者の最近の研究によって分かってきた新しい知見についても書かれています。
睡眠を制御する物質については色々と議論が交わされてきたのですが、最近になって新たな物質である「オレキシン」というものが見つかり、それを見つけた経緯やその重要性について語られています。実は、人は睡眠状態の方が元々安定で、覚醒状態の方が不安定な存在という、睡眠を減らそうとしている人には驚きの話題についても触れられています。
睡眠に関する様々な疑問
睡眠というものに対して色々な疑問が浮かぶものだと思います。夢はどうして見るのか、寝言を言ってしまうのはなぜなのだろうか、寝だめはできるのだろうか、というような疑問に対して、その道の専門家として科学的な観点から答えられています。睡眠についての雑学についてもこのパートで楽しく学ぶことのできるようになっています。
なぜ人は眠るのか
最初に話した「なぜ人は眠るのか」という難問はまだはっきりとした解決をしていません。もし眠らない動物がいるのだとしたら、その動物と人間を比べて考えることもできるはずですが、どの動物も睡眠の仕方に違いはあれども、絶対に眠ります。
いつ肉食獣に襲われるかわからない草食動物たちも、人に比べれば短い時間ではあるが眠ります。ずっと飛んでいる渡り鳥であっても、断続的に眠りを取っています。器用なのがイルカで、片方の脳を交互に眠らせて睡眠をとっています。
このように、生き延びるために工夫はしつつも、眠りを排除することはできなかったのです。この、生物全体に関わってくる壮大な疑問に対し、これまでの研究を踏まえて、筆者は最後にいくつか仮説を提示しています。
まとめ
誰もが関わっていかないとならない睡眠。毎日経験しているのに、それについて全く知らないという状態はなんとなく不安を覚えませんか?その不安を解消するためにもこの本を読んで学んでほしいです。
この「睡眠の科学」をぜひ手に取ってみてください!