ブラックホールという言葉はどこかで聞いたことあるかと思います。しかし、それがどのようなものかは知っていますか?
私は、大学の選択科目で宇宙科学を取っていたので少しだけ知ってはいました。しかし、それも表面的な知識だけで「ものすごい重力で色々な物を吸い込んでいる」「光も抜け出せなくて真っ暗」というようなことくらいしか知りませんでした。
この本は、ブラックホールについて、厳密さは妥協しつつもかみ砕いた説明をしており、本当に誰でも分かるような丁寧な説明をされたものになっています。
本の構成
この本は全部で10章に分かれています。
まず、ブラックホールの簡単な説明があります。本来、ブラックホールは相対性理論を使って理解するものですが、それは難しすぎるので高校物理で習うニュートン力学で簡単な理解を図ります。
次に、ブラックホール研究の歴史的背景を知ることになります。不思議な天体であるブラックホールは、構造も種類もかなり複雑なため、かなりの論争があったことが見て取れます。過去の人たちがどのように考えて今の成果が生まれているのかは、研究を見ることにおいてかなり面白い部分だと思います。
最後に、ブラックホールの具体的な構造とこれからの研究方針などについて語られています。ブラックホールは真ん中にある重力のものすごく強い天体ですが、その周りにはガス円盤やジェットというような構造があり、それらがどのようにして作られているかやどのような性質を持っているかが説明されています。
ブラックホールの知識を1つ
ブラックホールとは、簡単に言ってしまうと私の表面的な知識として紹介した通り「ものすごい重力がある天体で、光すらも抜け出すことができない」というものです。しかし、これは本当に一部分だけを説明したにすぎません。
重力があれば何でも吸い込むことができるのでしょうか。ここが私の思う最も大事なポイントです。ブラックホールはたしかにものすごい重力を持っています。それでも、ただ重力が強いというだけでは吸い込むことはできないのです。
その理由は太陽系を考えればわかります。地球は太陽の重力に引っ張られていますが、太陽と衝突することはありません。それは、地球が太陽の周りをまわっているからです。遠心力と釣り合うようになっています。
これと同じことがブラックホールでも起こりますが、ブラックホールはきちんと周りのガスを吸い込むことができるようになっています。他の力が加わることで複雑な作用が働き、最終的に吸い込みに成功しているのです。
ブラックホール研究の難しさ
ブラックホール研究の難しさは、遠くにあるのにものすごく小さいということ、相対性理論や量子力学などの難しい学問の知識をフル活用しなければならないということ、だと私は感じました。
特に、遠くにあるのにものすごく小さいということは、観測するうえでいまだに課題となっている部分です。天体の重力を大きくするためには、質量を大きくするか半径を小さくすることになります。そのため、ブラックホールはかなり小さな天体になってしまい、いまだに直接の観察は難しい状況になっています。
現在はコンピュータシミュレーションで色々とブラックホールに知ることができています。しかし、それはあくまでシミュレーションであり、その正当性を示すためには実際に観察することが必要です。そこを今頑張っているところなのです。
まとめ
ブラックホールという様々な数式や知識を必要とする話題を、実際にゼロから理解できるように書かれています。もちろん難しい内容を省いた分厳密性には欠けますが、一般の人がブラックホールについて知るという意味では最高レベルの本になっているはずです。
この「ゼロからわかるブラックホール」をぜひ手に取ってみてください。