組織学

神経は、脳などの中枢神経、体中にある末梢神経に分けられます。

神経にはいまだに分かっていないことがたくさんあります。それだけ複雑な仕組みで私たちの体を支配しているわけです。

ちなみに、東大医学部の研究室の半分くらいは神経関連の研究室となっています。それだけ神経については分からないことだらけということです。

組織学では、その基本構造について主に考えていきます。

神経細胞の構造

樹状突起

樹状突起は、外界や他の神経細胞から情報を受け取るものです。受け取って、それを細胞体に伝えていきます。

細胞体

細胞体は、樹状突起の受け取った情報を統合して、軸索に伝えるものです。通常の細胞と同じように核と細胞質で構成されています。

軸索

軸索は、情報を別の神経細胞や効果器の細胞に伝えます。効果器とは、筋肉のように最終的に情報を伝えたい先のことを指します。

軸索へのタンパク質供給は細胞体からの軸索流によって賄われています。

シナプス

シナプスとは、ある神経細胞の軸索と他の神経細胞の樹状突起との接合部分のことを指します。これには2種類存在します。

1つ目は、電気的シナプスです。これは、ギャップ結合によって行われ、イオンの流入によって電気信号を伝えます。

2つ目は、化学的シナプスです。一般的にシナプスというとこちらを指します。軸索に活動電位が伝わっていき、その先端のシナプス小頭に達します。すると、シナプス小頭内にカルシウムイオンが流入し、シナプス小頭から神経伝達物質が放出されます。これを、もう一方の神経細胞の樹状突起が認識し、イオンの流出入によって電気信号を作り出して細胞体に伝えます。

シナプスによる神経伝達が繰り返されることによって、情報が末梢まででも伝えることができるのです。

ミエリン鞘

ミエリン鞘とは、軸索の周りに巻き付く絶縁性のリン脂質の層のことです。ミエリン鞘がある神経を有髄神経、ない神経を無髄神経と呼びます。

ミエリン鞘は、軸索に沿って何個もついています。ミエリン鞘とミエリン鞘の間のことをランヴィエ絞輪と呼びます。ミエリン鞘は絶縁性であることから、ランヴィエ絞輪でしか電気が伝わりません。これを跳躍伝導と呼びます。これによって、神経伝達が速く進むことになります。

神経細胞の形態

神経細胞の形態には主に4種類あります。

双極神経細胞は、いわゆる一般的な神経細胞で、樹状突起→細胞体→軸索、となっているものです。

単極神経細胞は、双極神経細胞から樹状突起を除いたものです。軸索しかないので単極と呼ばれます。

偽単極神経細胞は、単極神経細胞の軸索が2つに分かれたような形をしています。しかし、その片方は樹状突起としての役割を持っているので、形が違うだけで機能的には双極神経細胞と同じになっています。

多極神経細胞は、樹状突起が複数あるものです。複数の軸索から情報を受け取り、統合して軸索に情報を流します。

神経膠細胞

神経細胞の周りにはそれを支えたり、様々な機能によって助けたりする細胞があります。それらを神経膠細胞といいます。

星状膠細胞~小膠細胞までが中枢神経系、シュワン細胞と衛星細胞が末梢神経系、にあるものです。

星状膠細胞

星状膠細胞は、大きな細胞体と多数の突起を持っています。役割としては、突起が毛細血管と神経細胞の表面を覆い、物理的・代謝的保護を行うことにあります。

希突起膠細胞

希突起膠細胞は、数本の突起を出して、その先でミエリン鞘を形成します。

小膠細胞

小膠細胞は、名前の通りに小さな膠細胞です。神経に損傷が起こったときに、損傷細胞を貪食して取り除くというような機能を持っています。

シュワン細胞

シュワン細胞は、それ単体で軸索の周りに巻き付いてミエリン鞘を形成しています。つまり、末梢神経のミエリン鞘はシュワン細胞の細胞膜でできています。

衛星細胞

衛星細胞は、神経細胞の細胞体が集まった神経節で、それぞれの神経細胞を取り囲んでいます。1つの神経細胞につき、数個の衛星細胞があります。役割としては、絶縁作用を持っており、また神経細胞を栄養したり支持したりします。



まとめ

神経は複雑なものだと言いました。どのように情報を伝え、どのように情報を蓄えているかなどを考え出すと本当にキリがないものです。しかし、組織学として習う概要は上のようになっています。どのような細胞があるか、それらが主にどう働いているか、をきちんと押さえておきましょう。